今までの積み重ね
登山に懸ける想い(No1)
一年前に僕は、内田さんに一つの夢を叶えて貰いました。それは、野球が大好きなんだけど、野球部に入る事が出来なかった僕にとって、憧れで大ファンである上原投手とのキャッチボールでした。テレビの中にいた憧れの人、夢の人とキャッチボールが出来た~そして、話までして「頑張れよ」と応援してくれた~そのことで僕は「どんな夢でも思い続ければ、いつかは叶う。諦めることはないんだ。」と、勇気を与えてもらいました。 そしていつかはもう一度自分の足で立って、仲間達と野球を楽しみたいという夢をあきらめないぞと思えるようになってきました。また、僕もいつかは、内田さんのように[子供達の夢を叶えてあげられるような人になりたい]とも思い、将来は児童相談員をやりたいと思いました。
しかし今の僕では人の夢なんか叶えられるだけの力は持ってないなと思います。というのは、僕の中に時々「車椅子に乗っている自分が恥ずかしい」と思うことがあるからです。
頭の中では車椅子に乗っていることは恥ずかしいことではないと分かっているのに、心の中に「恥ずかしい」と思っている自分がいるのです。きっと自分自身に対して自信が持てないからこういうことを思うのではないかと思います。僕はもっと強い自信を持ちたいのです。
僕のその夢を実現させるのに内田さんは、色々な方法を使って叶えてくれました。どのようにして夢を叶えていくのか興味を持ったそんな矢先、内田さんから「八月にブライトホルンの頂上を一緒に目指そう」と誘われました。それまで僕はブライトホルンという山がどこに有るのかも知りませんでした。しかしブライトホルン登頂は7年前からの内田さんの夢であり、その夢をどのようにして実現に持っていくのか僕は知りたくて一緒に実現に向けて行動することにしました。
また、僕は上原投手とのキャッチボールのときに夢の達成のために自分ではあまり努力せず、内田さんたちに叶えてもらっていました。なので「夢は必ずかなう」ということに対してまだ半分信じきれていない面があるように思えるのです。その吹っ切れていない面を今度は自分で努力して実現させていくことによって解消し、強い自信に変えていきたいと思っています。
やっていくうちに、難しい問題がどんどん出てきました。どうやって歩けない自分たちが登頂するのかとか、そのための資金はどうするのかとか、応援してくれる人たちはどうするのかとか・・・しかし、その中で一番大きな問題は、医療的な問題でした。
僕の体が、高い雪山の上の低温度や低気圧や低酸素に耐えられるのかという問題です。そのことについて調べてみましたが、筋ジストロフィーの患者がこのような高山に登ったことの実例がまずなく、どのようになってしまうのか分からないということでした。場合によっては命を落とすことにもなりかねないといわれました。それを聞いた時、とても怖くなり震えがとまりませんでした。なのに不思議と僕の心の中に「絶対に負けない。必ず成功させるんだ!」という気持ちのほうがもっと強く湧き出てきたのです。
僕の病気は進行性のものでどんどん悪くなっていくといわれています。でも、そんな進行に打ち勝つための強い精神力が必要なのです。この登山で負けているようでは、病気にも勝てません。僕は、この登山を絶対成功させてその強い気持ちと自信を手に入れたいのです。
僕の中にこんな強い気持ちがあるなんて不思議でした。それはきっと、この計画を知った時からずっと支えてくれたメンバーのみんなのおかげだと思うのです。時間もお金も惜しみなく費やし、僕が悩んだときにはいつでも話に乗ってくれ、一緒に考え悩んでくれる、そんなメンバーがいたからこそ、僕は今ここまで考えられるようになったんだと思います。 もしかすると頂上までは行けないかもしれません。しかしこの素敵なメンバーと一緒に頂上を目指して苦難を乗り越えていくことが、今の僕に出来る精一杯のことです。そのことが僕の未来につながる最高の喜びと自信になると信じています。
応援宜しくお願いします!!
プロフィール
井出今日我(いできょうが) 佐久市臼田在住
1990・3・20生まれ(3780グラムの優良児でした)
16歳 小海高校2年生(将棋班に入っています)
5歳の時、難病の筋ジストロフィーと診断される
過去にやっていたスポーツ・・少年野球・卓球
趣味・・・プロ野球観戦(巨人ファン・上原浩治ファンです)
将来への夢・・・児童相談員になって悩んでいる子どもたちの力になりたい 2001(小学校6年生)・12月 車椅子での生活が始まる
2004(中学校2年生)・7月 学年登山で八ヶ岳に挑戦
2005(高校1年生)・7月ブライトホルン登頂への挑戦始まる
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進行性筋ジストロフィーとは:今の医学では、治すことの出来ない難病の一つだそうです。徐々に体の筋肉が衰え、歩行が出来なくなったり・手の力がなくなったり・口の筋肉が衰えうまく話す事が出来なくなったり・呼吸の筋肉・心臓の筋肉までもが衰えてしまう怖い病気です。自分の意志とは関係なく、ドンドンと進行していく病気のようです。
現在、僕は自分で歩くこと・立つことができません。両腕にもあまり力が入らず、移動や着替えやトイレなど高校生活を送っていても不便に感じることが多いですが、頑張って生活しています。
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登山に懸ける想い(No2)
僕は小学六年の後半から車椅子生活を送るようになりました。
車椅子での生活が始まってから今まで生活してきた中で強く感じることがあります。それは、健常者と障害者の間に大きく存在する「未開の部分」の事です。
「未開の部分」という言い方は分かりづらいかもしれません。一般には「壁」という言い方がされていると思いますが、僕はあえて「未開の部分」という言葉を使いたいと思います。そこには僕の強い思いがあるからです。
健常者には当たり前に出来ることが障害者には出来ないことがたくさん有ります。一言で「障害者」といっても、一人ひとり「出来ること、出来ないこと」がみんな違います。そのことが理解されないことで誤解や不和が生まれやすいなあと思います。
そしてさらにそこから生まれた誤解が、障害者と健常者の間の対等な人間としての関係までも壊してしまうことがあると思うのです。
「その位自分で出来るだろ・・・」とか「こんなに手伝ってあげているのに・・」いう健常者と、色々手伝ってもらっている中で障害者の「出来ないからお願いしているのに・・・」とか「我慢しているのに・・・」というお互いの理解のなさから生まれた対立が起きた時、「もう、お前の事なんかしらない!」「だったら良いよ!」って喧嘩したとします。健常者は、それでも明日から変わりなく生活を送ることができます。
しかし、障害者はそのままでは生活できなくなってしまうのです。手伝ってもらわなければ生活できなくなってしまう障害者は、納得行かなくても謝ったりしなければならなくなります。こうなると、人としての心の通い合いがなくなってしまい、そこに両者を離してしまう部分が生まれてくると思うのです。
でも、僕はこの両者を離している部分を「決してつき破ることが出来ない壁」だとは思いません。それは、お互いを理解し、熱い心を持っていればこれから開いていくことが出来る「未開の部分」だと考えているんです。
現に今回のブライトホルン登頂に参加してくれているメンバーは、日々の忙しい生活の中でも、精一杯この現実と未開の部分を切り開こうと考えているメンバーばかりです。 そして、そんなメンバーと同じ目的に向かって共に力を合わせる中で、僕自身も少しずつ変わってきていることを感じます。今までの自分が友達とうまく行かなかったのは、自分の中の何が足りなかったのかということも少しずつ見えてきました。
僕は車椅子生活になってから、外出するのがイヤになった時期がありました。車椅子で表を歩くと、ビックリしたような目で見られたり、冷たい目で見られたりすることがあるからです。それでも勇気を出して買い物や食事をしようとすると、そこには階段が有ったりして入れなかったりすることも多かったです。そのことをいちいち説明するのもイヤになってしまい、僕は段々と外に出ることが気が重くなってしまいました。
でも、傷つくことを怖がって、説明することを怠っているのでは障害者の事がどんどん分かりづらくなってしまいます。共に生活し、行動する中でしかお互いを理解し合っていくことは出来ないんです。
そして、一番大切なこと。そして嬉しいこと。それは、こうやって表に飛び出して障害のことを理解して貰おうとすることで、冷たかったり無理解だったりする人以上に、心を寄せてくれる人や応援してくれる人がたくさん居るということが分かってきたことです。
そしてもっと理解して貰えるようにするには、僕自身がもっともっと負けない心を作らなくてはいけません。もっと、上手に障害のことを伝えていく心を作らなければいけません。この挑戦を通して、僕の中にもっともっと強い自分を造り上げて行きたいです。
僕の今回のこのブライトホルン登頂への挑戦は、ブライトホルンの頂上に立つためだけではなくて、障害者と健常者の間に横たわる未開の部分をどれだけ埋められる事ができるかへの挑戦なんです。
僕はこの両者の間に横たわる大きな未開の部分を、今回の挑戦を通してどれだけ埋めていくことが出来るのかを見極めていきたいと思うんです。そして、登頂を果たした時、同じ達成感を、同じ喜びをそこで味わえたなら、両者の間の未開の部分は埋められるんじゃないかって思うんです。
そして、障害者と健常者の間の未開の部分が埋められるということを体験を通して心から信じられるようになった時、僕が将来なりたいと思っている『児童相談員』が、僕のように悩んでいる、僕より小さい子供達の力になれるって言うことも信じられると思うんです。その目標に向かって頑張っていく強い自信が作れるかどうかが今回の挑戦に懸かっています。
だから僕はブライトホルン登頂をこのメンバーと共に絶対成功させます。
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